好きな場所 2
さし絵画家高畠華宵はそれまで明石の老人ホームで絵筆をとっていたが、雑誌に掲載された記事を頼りに訪ねてくれた鹿野さんの一枚の絵の思い出を知ると、鹿野さんをモデルに新しく描いてくれた。
それが「新さらば故郷」である。
少年の日の鹿野さんが故郷の山々を背景に、今旅立とうとする青年の姿に自分を重ねてみた陵かしい絵と、鹿野さん自身の出立の姿を描いた二枚の「さらば故郷」は美術館の壁に並んでいる。
華宵が鹿野さんの招きで上京したのはそれから間もなくであった。
やがてさし絵ファンによる「華宵会」が発足し、上野松坂屋では「華宵名作回顧展」が開かれるなどして、往年の華宵を知る人たちを集めて沸いた。