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2010年04月 アーカイブ

好きな場所 2

さし絵画家高畠華宵はそれまで明石の老人ホームで絵筆をとっていたが、雑誌に掲載された記事を頼りに訪ねてくれた鹿野さんの一枚の絵の思い出を知ると、鹿野さんをモデルに新しく描いてくれた。
それが「新さらば故郷」である。

少年の日の鹿野さんが故郷の山々を背景に、今旅立とうとする青年の姿に自分を重ねてみた陵かしい絵と、鹿野さん自身の出立の姿を描いた二枚の「さらば故郷」は美術館の壁に並んでいる。

華宵が鹿野さんの招きで上京したのはそれから間もなくであった。
やがてさし絵ファンによる「華宵会」が発足し、上野松坂屋では「華宵名作回顧展」が開かれるなどして、往年の華宵を知る人たちを集めて沸いた。

好きな場所 3

しかし返り咲いた華宵熱が高まる中で、華宵は没した。七十八歳であった。
一歩入ると、見る人をたちまち少年少女の昔にひき戻してしまうさし絵の展示室は、蕗谷虹児、加藤まさを、中原淳一など、大正から昭和にかけて一世を風靡したさし絵画家の原画を公開している。

またコレクションはさし絵だけにとどまらず、当時の雑誌やポスター、手紙、日常文書と多様。
「さし絵を含むこれらのコレクションは収蔵量が問題なのではなく、当時の風俗を知る上で価値あるもの。

この美術館はいわば風俗の資料館のような役割」と学芸員さんは語っている。

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